己のからだを畏れて病を恐れよ。 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



きっかけは、林葉直子の肝硬変告白の記事だった。


2つ上の彼女の病状を知って、酒飲みの私は
「そうか…そういう年齢なんだなもう、気をつけよう」と
思いつつ、去年末から気になっていた自分の体調をふと思い出した。


どこが調子悪い、というのは無い。
年末年始恒例の食べ過ぎ飲み過ぎで
体重と身体のサイズが増加してはいたが元気である。



ただ、下腹が気になっていた。


上に乗っかる脂肪を抜きに考えたとしても、
何だかお腹にガスか何かがたまっているような、
ぷくっと膨れているような、ずっとそんな気がしていたからだ。


先々週にウイルス性胃腸炎で水分くらいしか摂れなかったせいで
体重が減ったときでも、お腹は膨れていたように感じていた。



「お腹 張り」でググッていたところ、
肝臓が悪くなると腹に腹水が溜まり、膨れてくると書いてあり、
林葉直子のことを思い出してドキッとした。


でも「腹水は末期症状」と書いてあったので
まさか他に不具合もないのにいきなりそこには至るまい、と
すこし安堵した。でもいちど調べてみるに越したことはないな…と
検索をすすめていった時、とても気になるものを見つけたのだ。



「卵巣がん」のサイン、ということばだった。


えっ…と思っていろいろな関連ページを読んでみた。


他が太っていないのにお腹だけぽっこりと張っている。
急にスカートがきつくなったと思う。腹部に圧迫感あり。
そんなお腹の張りは卵巣がんが腹腔内に
播種(種をばらまいたようにがんが散らばって転移すること)した
結果、腹水がたまっている可能性でもあるので至急、病院へ。


いやいや、これも他に不具合がないのにいきなりはないだろうよ、
と思ったそばから、こんな記事も見つけた。


卵巣がんは「沈黙の病気」と言われていて、
進行するまで自覚症状がまったくなく、
かつ検診でも見つけにくい。
腫瘍マーカーで特異な数値が出ることで発覚もするが、
初期ではその数値も出ないので分かりづらい。


ゆえに気づいた時にはすでに進行しているケースも多く、
その中でも「検査するまで何の不調もなく普通に暮らしていた」
という人もたくさんいる。


出産経験がない高齢女性だとリスクも高まるようだ。
そして早期発見しやすい子宮頸がんなどよりも
卵巣がんの予後はずっと厳しい云々…。



読めば読むほど血の気が引いていった。



今度は卵巣がんの闘病を実際にされた方々の
記事やブログなどに行き当たる。


皆さんやはり最初は「いつもの筋腫かな?」とか
「ちょっと太ったのかな」といった何気ない始まりが多いようだ。


何てことだ。
私も可能性が十分あるではないか。



数年前に子宮頸部の中度異形成が分かった時の
あの感じが蘇ってくる。


いきなり足払いを食らわされ、
その下のどっしりと揺るがない地面が
瞬時に消失したかのようなショック。


「がんかもしれない」と思ったとき、
この先も当分は安寧に続いていくと思っていた
日常があっという間に失われるかもしれないという
恐れが全身を覆い、頭がぐわんぐわんと鳴った。



異形成の知識を得た後に思えば、
異形成イコール「がんかもよ」ではなく、
また異形成だったとしても危険が少ないものも
たくさんあったわけだが、今回はそういう類ではないようだ。



それにしても何てことだ。


私が読者登録しているブロガーさんの中にも
卵巣がん闘病で苦労を乗り越えている方がいたし、
それをいつも読んでいたはずなのに、
そして異形成で円錐切除手術をした自分は
婦人科系へのこまかな注意を怠るべきでないのも
重々承知していたはずなのに、
なんで卵巣に関しては全く知識がない
(どうやって検診するのか、不調のサインは何かなど)のだろう。


あまりにも無知すぎる、と自分を殴りたくなった。



会議の席でも突然うわの空になった。
心臓がばくばくしながら、合間にいきつけの
S先生の病院に電話を入れ、翌日午前の診療予約を取った。


さあ、そこからのひと晩が長かった。


もしかして明日の昼に私は自分の余命を
考えねばならないのかもしれない、と思った。


家族、夫、仕事、いろんなことをどうしよう、と思った。



「たかが下腹ぽっこりくらいでおおげさじゃね?ぷぷ」
これを読んでいる大半の方が思うとおもう。


でも違うんです。
いちどあの「がんかもしれない」体験をし、
実際にがん化する可能性の高い変異細胞を切除した身としては
「さっきまでほんとにフツーの呑気な日々」から
何の前ぶれもなく「命の危険を考える日々」に唐突にシフトする、
ということが余裕で起こりうる
と知っているからなんです。


そして実際にがん闘病に入った方々も、
何の予感も準備もなくそうなったことを知っているからなんです。



調べてみると、卵巣の異常は内診や超音波検査で
見つかることが多いようだ。
色々と思い返してみる。昨年夏の婦人科検診の時…。
でもあれはおもに子宮頸部の検査だろうなあ。



腫瘍マーカーの数値で分かる…か。
わたし腫瘍マーカー申し込んでいたけど、
お願いしたのは大腸とか膵臓とかだったよなあ。


結果表をひっくり返してみると、私が申し込んでない
オプションのところにちゃんと「卵巣」の項目があるではないか。
バカじゃないの?何で肝心のこれに申し込んでないの?
つうか健康診断センターも教えてくれよ!これやっとけって!
昨今、子宮頸がんに関しての啓蒙は進んでいるけど、
子宮体がんや卵巣がんに関しては何の啓蒙もないってどーゆーこと?


…完全に逆ギレである。
半年に一度は婦人科の内診台に載ってるからといって、
自分自身、油断していたとしか思えない。



鏡の前を横切るたび、横向きになってお腹をうつしてみる。
お酒も飲んでないし健康的な食事を少量しか摂っていない
ここ最近なのに、やっぱり下腹だけがぽこっと出ている気がする。
「肝臓でもないだろうし…お通じは毎日だし…やっぱり…」
暗澹とする。


夫に不安を訴え、もしも最悪の結果が出たときのために、
初めて病院に付き添ってもらうことにした。



というわけで今日。


午前中予約で行ったにも関わらず、やっぱりというか
安定の混み具合で、3時間待たされた。
でも夫が一緒で、余計なことを考えることがなかったので
のんびりと待つことができた。


夫は待ちすぎて&眠くてグロッキーである。
首をがっくんがっくんさせながら、女だけの
待合室のすみっこでうたたねしている。
たいへん申し訳ない…。



やっと順番がきて、S先生と久しぶりに会う。
「おっ!久しぶりだね!」先生の顔を見ると安心する。
なんと1年半ぶりだそうで、その間健康診断や
他の婦人科に行ってはいたが、己のサボり具合にまた腹が立つ。
円錐切除後の定期検診(半年に一度くらい)はずっとしろよ自分!と。



「先生、卵巣が心配なんです。がんかもしれないと」


そして、超音波検査具を挿入して検査。
画面みながら先生が言う。


「これが右の卵巣。これが左ね。…うん、全く異常ないよ」


「ま、マジですか…!?」


「99…いや、100%ないね」


断言頂きました
さすがいつも自信満々S先生(笑)


最近では子宮頸部異形成の権威として有名だが、
もともと卵巣がんが専門だそうで。
手術数や症例判断が断然多いんだと。
だからMRIでしか判断できない医師もいるけど
自分が診れば大丈夫と言って頂いた。



ただ、他の病気が原因で腸が動かず腹が膨れる可能性もあるからと
別の検査をし、さらに子宮頸部の定期検診のための組織診もしてくれた。
結果は来週。


ええ、とりあえず卵巣にさしあたっての危険がなければ
わたしとしてはひと安心。



急に、いろんなものが自分のところに帰ってきた感じがして、
ああ、これが「生きた心地」なのかなと思った。


夫も「よかったねー」と言って会社に出かけていった。


先の震災を始め、東京に天災があるときは
いつだって出張に出かけていて、
「ひとりで厄災をすり抜ける男」と名高いので
今日は私の分の災難もすり抜けさせてくれたのかもしれない(笑)
何にせよありがたいことである。




私はそのあと、念のために隣駅の
いきつけの胃腸科をはしごし、
胃腸面でのことも尋ねてきた。


診察してくれた先生は、
「少し下垂気味なのかもしれない。
 食べたらその分溜まりやすくなってるのかも。
 そんなに心配しなくて大丈夫だと思う。
 肝臓関係でお腹が張るとしたらかなり悪くなってから。
 そんな元気では来れないよ(笑)」
と言ってくれた。



ていうことは何?


婦人科にこれで問題がなければ
このぽっこりは正真正銘の脂肪?
またはガス?。(´д`lll)




しかし。




痛感したのである。



女たるもの、子宮頸部、子宮体部、卵巣部、乳。
女性特有のすべての器官のリスクとサインについて
もっともっと熟知していなければならないと。


そしていつ何時自分にもそれが降りかかるかもしれないと
神経質なくらいに気にしながら、定期的に細かい検診をするのを
怠ってはいけないと。


何か少しでも普通と違うことがあったら、
いや何もヘンじゃなくても、
とにかくマメにマメに婦人科で診てもらうべしと。


まして出産経験がない40代ならマックスで万全にと。



(だって卵巣がんなんて「早期発見に有効な方法が確率されてない」ってあるんだよ!?

どうすりゃいいんだよ!こまめに通って“普段”を把握してもらい、“異常”に

なるはやで気付いてもらうしかないじゃないか)



異形成をやったときに、そういえば思ったのであった。
こういう「女性特有のリスク(妊娠出産関係も含めて)」に関しては
だーれも「ほら、聞いとけよ、知っとけよ」とは言ってくれない。
無知と無自覚を痛感するのは、実際に何らかの異常が
発見された時はじめて、なのである。


だから普段から、身構えすぎるくらい、貪欲すぎるくらい、
自分の「器官」に関しては見守り続けねばならないのだ。



というわけで今後はぜったいに怠りません。卵巣に関しても。




そして、円錐切除手術もし、マンモでも引っかかって細胞診も経験し、
今回卵巣の心配までした私が言います。



30過ぎたら(もちろん過ぎてなくても)
半年に一度はありとあらゆる検査をしとけ。
内診受けまくっとけ、女たちよ。


色事ではなく、医療ごとでは

簡単に頻繁に足を開いとけ。


「まさか私に限っては」なんてことはない。
この分野に関しては、神様が自分だけを
見逃してくれ続ける、なんてのは、
どうやら甘い夢であるのだから。




(最後に、卵巣がん闘病記を細かく記してくれている
すべてのブロガーさまに、本当にありがとうと言いたいです。
そこに詳しく記してくれたおかげで、気を付けましょうと
記してくれたおかげで、私は速攻で検査に行く気になったので!)





※それと、今回のことや先生の見立てや私がここに記してることは、

 ほんとうに私の個人的な経験と見解なので、これをもって「正解」と

 くれぐれもしないでください。もしかしたら間違ってるかもしれないし

 私はまだまだ無知かもしれないし、100%安全なわけでもないのです。

 どうかご自身で調べ、検診を受け、判断してください。

 また、間違った知識や表現があってご迷惑をおかけすることありましたら

 お詫びいたします。