いま「はっきり、大きくものを言う」こと。〜ドラマ台詞書き起こし | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。


皆が口々に言ってたし既にみんな終わってしまったけど、今クールのドラマはいいのがとても多く、普段あまりテレビを追わない私も「火曜日は『大豆田とわ子』、土曜日は『コントが始まる』…」などとドラマを観るのに忙しかった。

その中でもNHKの「今ここにある危機と僕の好感度について」「半径5メートル」は、まさに令和3年6月の時点での「今ここにある危機(問題)」をはっきりと示し、主人公と登場人物がそれに真っ向から取り組む姿を描いているのがとてもよかったと思う。

ちょっと恥ずかしいのだけど私には「ひびくことば集」と名付けたノートがあって、本やら映像やらで刺さった言葉を書き留めている。普段は個人の感情やわたし自身の指針にぴったり寄り添う言葉を書き写すことが多いのだけど、この2つのドラマからは「社会的に大きな問題に対しての『我々』の向き合い方」についての言葉を書き留めたので大変めずらしいかもしれない。
…というか、「そういうことに無関心だと近々ヤバいことになるよ」という流れが来ているんだと思ってる。

なので、ちょっと長々しくなるけどここに載せておこうっと。

 

 

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◾️「今ここにある危機と僕の好感度について」3話
(大学主催イベントのゲスト・浜田がネットで炎上、爆破予告を受けたことからイベントの中止を進言する理事会。しかし浜田が外国特派員協会の記者会見で「言論の自由」を盾に大学への批判を表明。大学総長である三芳も同じ場で会見するが変にツッコまれないために「とにかく内容のあることを何も言わない」方向で頑張る。しかし最後に質問に立った外国人記者の言葉で三芳はこれまでの姿勢を180度帰ることになる)

外国人記者「Dr.三芳が安全確保が第一だとお考えであることは充分分かりました。それ以外の答えを話すつもりがないことも。けれども、あきらめずに質問してみようと思います。なぜならこうした努力を続けることが、世界を少しでも良くしてゆくために必要だと思うからです。
先生は考古学がご専門でいらっしゃいます。ということは、人類の歴史において権力による独裁がどのように行われてきたかもよくご存知のはずです。言論の弾圧が必ずその過程に含まれてきたということも。
黒人解放の指導者でうあったキング牧師は、こんな言葉を残しています。『問題に対して沈黙するようになった時、我々の命は終わりに向かい始める。そして最大の悲劇は悪人の暴挙ではなく、善人の沈黙である』ーーーDr.三芳、それでもお答えは『安全確保』ですか?安全確保は確かに重要です。ただ私がとても残念に思うのは、先生のその、沈黙です。」


◾️「半径5メートル」8話
(就職氷河期世代の「いま」を取材している週刊誌記者・風未香は、SNSのインフルエンサーである「野良犬」こと須川にインタビューする。会社の不当解雇について激しい怒りをあらわにする須川に引き気味の風未香の様子に「なんか他人事みたいだね」と言う先輩記者・宝子。そして風未香は須川の言葉を過激だと判断して削除する。その記事をみた須川は怒りの電話をかけてくる…)

須川「私の言ってることが骨抜きになってるとは思わない?私はね、わざと過激に発言してるの。わざとよ。わからない?共感も同情もいらない。私はね、真剣に怒ってるの。だから『うるさく吠える野良犬』なのよ。当たり障りのないことだけ書かれたんじゃ、怒りなんて伝わらないし何も変わらない。私たちはね、やり直すチャンスが欲しいの!」


(その後、削除した文言について話す宝子と風未香)
 

宝子「なんでこの質問したの?」

風未香「メッセージ性を強めて、読者の共感を得たいと思ったからです」

宝子「で、なんで切ったの?」

風未香「返ってきた答えがさすがに被害者意識が強すぎて、
読者の共感を得にくいかもって思ったんです」

宝子「それは…読者の共感じゃなくて、ふーみんの共感でしょ?」


(宝子、いきなり風未香の足を思い切り踏み続ける)

風未香「いたたた…宝子さん痛い痛いいたいいたいですーっ!」

宝子「うるさい!!!静かにして!
(あっけにとられる風未香)
……って言われて黙ってられる?痛いって叫んでるのに、なかったことにされそうな時に。
ふーみんがみてきた半径5メートルと、彼女が見てきた半径5メートルは違う。踏まれ方も、踏まれた数も…ぜんぜん違う」


(自分の間違いに気づき、須川に謝罪にゆく風未香)

風未香「あの…私、黙って頑張ってる、じっと我慢してる人のほうが偉いって、心のどこかにそういう発想があったんだと思います」

須川「…それで私の強気な発言が気に入らなかった?」

風未香「はい。声にならない人の声を拾いたい、大切にしたい。その一方で、叫んでる人には、距離をおいてしまって。その叫び声の中の気持ちを、聞き取ろうとはしていませんでした」

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国民の不満や疑問に何ひとつまともに答えない政府。さまざまに抑圧・差別されている人たちの声。私たち自身も「女性」にまつわる差別や不平等を実はいやというほど味わっている。そういう現状に対して抗議し、怒り、皆で立ち上がろうと旗をふる人たちはたくさんいる。
彼らの姿勢を見て、同時に「そういうもんだから仕方ない」とあきらめる人を見て、私もいちいちちゃんと怒ろうと思った。私の年代が怒らなければ、いまの若者や子供の世代に悪いものがぜーんぶ継承されちゃうから。「そういうもん」をストップするのは私たちの仕事。そう思った。
だけど「もっと穏やかに感じよくしないと受け入れてもらえないよ」「声がデカいとこわいよね」「怒りじゃない方法で伝えたら?」「少し黙るべき」みたいな声もまた、山ほど降り注いでる。何ぞそれ??自分だけは平静でご機嫌でフラットみたいな顔をして、笑顔で問題を小さくしようと迫ってくる人たち。そういう人たちに感じていたモヤモヤを、ここに書き留めた台詞は全部吹き飛ばしてくれた。そうだよ、そうなんだよって思った。はっきり言うこと、ちゃんと怒ることはいま本当に必要なんだよ。ずっと足を踏まれて血を流したまま、にこにこして足をどけてくれるのを待つ馬鹿がどこにいるってんだい。ええかげんにせえや。

もちろん自分が足を踏んづける側にもなりうるわけで(知らない間に既に踏んづけっぱなしな人になってる可能性もある。おそろしい)、そちらの側面でもいつも読み返し思い出したい台詞です。