「こわい」の正体 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。


Eテレの「漫勉」がまた始まった。うれしい。
ものをつくるひとの話すことばはおのずと名言の宝庫だし、1コマ描くだけでこれだけの労力と熱量をかけるのかというさまにはほんとに心打たれる。

 

漫勉観るたびに言ってることだけど、漫画家さんの仕事ぶりもすごいけどこの番組は浦沢直樹の好奇心、気づき、分析力で成り立っていると思う。ほんと彼のそれは毎回面白いし「よくそういうところを感じ取ったなあ」と感心してしまう。さらに誰とでも話を深堀りできるコミュ力、ちょっぴりのアウトロー感。だから漫勉の結論はいつも「浦沢直樹ってモテるよね」だ。

 


先日の伊藤潤二さん(ホラーまんが)の回では、浦沢先生が怖さというものについて「一瞬だけ見るから怖いっていうのはある。真正面からじっくり見たらそのうち慣れる。怖さというのはチラッと見えることだ」というようなことを言っていた。

 

ああ、まさにそうかもしれないと思った。そしてそれはホラーに限らず、「自分が恐れて(畏れて)いること」に関してもそうなのだ、きっと。

 

自分が始めようとしている新しいこと、まかされそうな役割、いきなりやって来るトラブル、まだ直接コンタクトを取っていないあの人。そういうものは結構な手前で「近づいたらこうなるかもしれない」「こう言われるかもしれない」と色々思ってしまう。そういうふうに想像するだけとか、少し触ってみただけとか、一歩踏み出したたけとか、その段階がいちばん怖いのだ。そして私は、その段階できびすを返して逃げてしまうことがとても多い。

 

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とまでは言わないけれど、覚悟を決めてええいやるかと真正面から取り組んだり、思い切って至近距離に近づいて直接対峙してみると、思ったよりもそれは小さく、単純で、意外と優しいのかもしれない。