浪曲バージン捨てた 〜ハイローによせて〜 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。

 

しばらく何の音沙汰もなかったからもー知らない!と思ってたところ、久々に連絡来た。と思ったら足しげく会いにくる。何ごともなかったかのように。何なのコイツ!?

…というヤリチンいばら男っているよね。このブログ、そういうとこある。

すいません。

 

 

さてわたくし、落語はよく行くようになったし、文楽も行ってみたらとても楽しかった。歌舞伎は母に誘われた時だけ行く(笑)というふうに古典芸能は少しずつかじっているのだけど、まだ手つかずのものはたくさんあります。

 

そのひとつが「浪曲」でした。

 

私のこれまでの浪曲の知識といえば「はだしのゲン」で元と進次が道ばたでやる「壺阪霊験記」のみ。(「はだゲン」で知ってるだけで実際に聴いたことなし)

 

妻は夫を労りつ〜夫は妻を慕いつつぅ〜(泣ける感動秘話らしい)

 

あと、「人気浪曲師の広沢虎造の興行権をめぐって、下関の籠寅組と神戸の山口組が抗争を起こし、その時の傷が元で二代目組長・山口登が死んだ」という史実で広沢虎造の名を覚えたくらい。薄い。知識めっちゃ薄い。第一、落語によく出てくる「講談」と区別がついてない。

で、「何か物語を節回しつけて難しげに長々と謡うもの」という勝手なイメージを抱き、そのままにしてました。

 

そしたら友人の中に浪曲好きの女子ぼたんちゃんがいて、彼女が「いや浪曲面白いから!」って言うので「そうなのか…!」と。彼女に連れられ浪曲デビューした美原あいが、自分で好きな浪曲師さんを見つけてまして。「あゆみ、この人なら浪曲デビューしやすいしすごく面白いから行こう!」とすすめられたので、先月行って来たです。

 

 

玉川太福さんによる浪曲講座の最終回(実演篇)というかたちで行われていたので、何とお代は500円。プロの芸をそんな値段でいいのか?とドキドキ。さらに入ってみたら落語でよく行く区民ホールだったので落語時の賑わいを知っている身としては大変失礼ながら「え…浪曲のお客、少なすぎ!??」と某ネット広告バナーみたいな驚きが。古典の枠を超え、すごく勢力的に活動している34歳の人気浪曲師、そして浪曲協会の理事ですよ皆さん!(聴いたことないのに)

 

腰くらいの高さの大きな台に布がかけてあって、横に三味線を抱えた年配の女性が座っている。登場した太福さんは背が高く色白で品があり、老舗商家の御曹司みたいな雰囲気のいい男。台の前に立つと貫禄があります。でも、トークは大変くだけていて親しみやすい。

 

今回は浪曲が初めてというお客さんが多かったので、まずは彼の作った創作落語ならぬ創作浪曲(浪曲にも古典と新作があるのか!)「地べたの二人〜おかず交換〜」から演ってくれました。これは美原あいが絶賛していたもので、「第一回渋谷らくご創作大賞」も受賞した作品だそうで。

川崎だか横浜だかの工場で働く若い男と壮年の男が昼休み、地べたに座ってお弁当タイム。若い方は市販の弁当。壮年の方は妻の作った弁当。そんな2人がおかずを交換しあうというただそれだけの話で、ドラマチックな事件も何も起きないんだけど(笑)それを朗々と語るんですよ、三味線の合いの手を入れつつ。すげー面白い。

 

後に演ってくれたのは古典の「天保水滸伝」の中の一節。酒癖が悪くて博徒の用心棒に身を落とした剣の達人が断酒していたけど、お祭りの時にお神酒と称してうっかり酒を飲んでしまうことから起こるひと騒動…というお話。これもすごく分かりやすかったし面白かった。

 

今回は500円で初心者向けということもあり、この2つで1時間。「うわーもっと聴いてみたいぃぃぃぃ!」というところで終わりました。

 

浪曲を初めて観て気づいたこと。

 

「朗々と節回しをつけて謡う部分」と「わりと普通に語る部分」が交互に繰り出されるつくりなのだな。

 

これまで勝手に文語調だと思ったけどそんなことはなく、文楽なんかに比べたらとても分かりやすいのだな。(後で調べてみたらそもそも浪曲って明治初期頃から始まったものなんで、近代の庶民的な芸能なんですね。分かりづらいはずがない)

 

三味線は映画音楽の役割を担っており、盛り上がってくるとベンベンと勢いよく鳴り、おねえさんの「イヨッ」「ハッ」という合いの手(これが時に格好よく時にセクシーなのだ)もよく入る。静かなところは鳴るか鳴らないかの絶妙さ。(何でもアドリブなんだそうだ!)

 

「えっ、これからどうなるの!」というところで話を終わらせ、続きはまたのお楽しみ、みたいなかたち。ラジオでもよく親しまれていたというから、今で言う連ドラ的な存在だったのかなあ。

 

玉川太福さん、マイク使わず(台にも設置してない)地声で勝負なのですが、これがびっくりするほど大きくよく通る。そして激しい!落語と違い、立ったまま演っている分アクションも大きく、ドラマチック。汗だく。浪曲ってこんなにアクティブなのか!ひとり劇団、劇団ひとり…!

 

いやあ、観てよかった。

これさ…もっともっとメジャーになっていいんじゃないの??ネタによっては、落語よりも親しみやすいんじゃないの?ちょっと、みんなもっと来いよ!

美原は太福ファンなので終演後にDVD購入してサインももらい、色々お話をしていましたが、今ならごひいきの浪曲師さんと距離めっちゃ近く親しめるじゃん…と腹黒いことも思いました。

 

区民ホールを出て居酒屋で色々語る私と美原。

「おかず交換の話だけであんなに面白くなるってすごいでしょ」

「うんすごい。普通の日常をドラマチックに語ることができるな浪曲は」

 

太福さんは11月に浪曲で「男はつらいよ」をやるという。(完全にわたし得!)

そこでふと思った。既にある面白いストーリーは、浪曲になるのではないか…?

 

「ねえ、『浪曲 HiGH&LOW』できるんじゃね…?」

(※最近わたしは映画「HiGH&LOW」にハマっています)

 

「…ありだな!!」

 

「一方その頃ォ〜湾岸地区ではァァアア〜」

「ベベン!(三味線)いよォ」

「無名街は、ア、よく燃えるのォォォォォォオ」

「琥珀さんンン」「よっ」「ア、如何した」「ハッ」「如何したァァァァァァ」

「いけるな」

 

 

 

これはやばい。ぜひお願いしたい。何なら脚本書く。俺が書く。

「浪曲シン・ゴジラ」でもいいんだけど、決めゼリフの多さや大仰な感じは、絶対ハイローの方が浪曲向きだ。

 

…というわけで、限りない未来と可能性を感じる(1度しか観てないのに素人が偉そうにすいません)浪曲、皆さんもいちど聴いてみて下さい。デビューには玉川太福さん、おすすめです。