そんなにつらいかアラサーよ | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



「マジでこんなつらい思いの中で生きてんの?」

それが、両作を読んだ感想でした。

今まで一度も読んだことのないいくえみ綾作品を、
友達(20代)が貸してくれました。

タイトルがちょっとそそりました。
「あなたのことはそれほど」

それほど


読んでみたらあれだよ、W不倫のはなしだったよ。
けっこうリアルで、これが女性の心を掴むのはよく分かったし、
話自体も「どうなっちゃうんだろう?」とドキドキする面白さ。


でもこんなん読んで、つらくねえの?
これもし仮に読者が共感してるとしたら、
(別に不倫してるしてないに関わらず)
胸が痛くてばったり倒れちゃわない?
そう思いました。


もうひとつ最近買って読んだのがこれです。
東村アキコ「東京タラレバ娘」

たられば


東村アキコ作品は大好きで、とにかくギャグセンス(古いなこの言葉…)
がとび抜けてるわそのくせ心臓がギューッとなる切なさを混ぜ込んでくるわ、
いま「どれを読んでも面白い」という数少ない作家さんだなと思います。

これも評判がすごく高かったので読んでみました。

やっぱり、すんごく面白かったです。

仕事はバリバリのアラサー(33歳)三人娘、
「だけど彼氏がいない」「結婚できてない」ということで
大変に焦ってジタバタしている物語です。

とにかく33歳は「もう若くないオバサン」で

世の中の男性の需要からは完全にハズレていて
自分たちで頑張らないとまじでヤバい、
だけど手にする恋はロマンスというにはあまりに世知辛い。
そんなふうに描かれています。


もちろんマンガ自体の面白さは抜群なのですが
(タラちゃんとレバーちゃん最高)

これもやっぱり「こんなん読んでつらくねえの?」と思いました。

現に、東村せんせいの周囲の女子たちは
撃ち抜かれて死屍累々みたいです(笑)


東村せんせいはあとがきでちゃんと

別に私は
「女は結婚しなきゃダメ」とか
「女の幸せは男で決まる」とか
「結婚できない女はかわいそう」
なんて全く思ってません

(中略)

「結婚したほうが 絶対絶対幸せだよ☆」
なんて、みじんも思っとらんのです!!

と書いているので、焦り振り回されるアラサーの
リアルな心情を描いているということだと思います。
これから、そこに作者からの何らかの
アンサーが用意されるのかもしれません。


でも私、二作品を読んで
「女(主人公)が受身で焦って傷ついてる」作品
もしかしたらあまり好きじゃないのかもしれないと思いました。
ばっかじゃねえの、と思っちゃったんです。


登場人物が幸せでなくてもいいし、
内容がえげつなくてもいい、
でも、手元に残しておきたいマンガは、
「つらいけど何かを見つけた(吹っ切った)主人公」
が出てくるものなのかも。

だから、女であることの理不尽さを身体中で感じながらも
「ああ、そういうことか…」と自分なりのアンサーを見出した
「地獄のガールフレンド」の登場人物たちのほうが、
好きなのかもしれません。


それにしてもタイトルに戻りますが、
アラサーって、こんなにつらかったかな…?

色恋とか、将来とかでいちばん悶々とするし
恋愛模様もすったもんだあるから傷つくことも
いっぱいある時期なのはすごく分かっています。


だけど「この年だからそろそろ結婚」とか
「婚活しないとマジやばい」とかって、
自分個人の恋模様じゃなくて、
いわゆる世の中の潮流でしょ?
自分の人生にまったくかすって来てない人の
もしくはかすって来ても最終的には何の責任もない人の
無責任な人の価値観に、そんなんに振り回される必要なくねえか?

あと不倫だの他人の彼氏だのって
絶対幸せな結末になんないし
自分がすり減るだけだから
やめたほうがいいよ?

恋人が(すごく欲しいのに)できないって、
「いい人がいない」んじゃなくて
「年だから」でもなくて
あなたの「許せない」「好きじゃない」ものが
多いだけなんだと思うよ?


そんなふうに思ってしまいました。


悩みたいのはすげえ分かる。
悩むことも山ほどあるのも分かる。

でももう悩むな。
わりと解決する。
いまの年齢は「不幸へのカウントダウン」でもないし、
瑕疵でもない。

そう思ったんですが、


わたしもアラサーの時、
不倫でギャアギャア泣いたりしてたし
変な男に引っかかって女同士で集合して
あーだこーだ言ってたし(いま思うとあれが第四出動…?)
「この先だれも私を選んでくれないのかもしれない」
って絶望して、東横線のホームでさめざめ泣いたりしてたなあ

ということにも気づいちゃいました。

ああ、私がいまそう思うのは、

この年齢(40代)になったからなのかもしれないな。
前にも書いたけど、「思えば遠くへきたもんだ」です。


だからこそもう一回言うけど、
必要以上に傷つかないで。
追い詰められるほど悩まないで。
あなたの価値は、
「年齢」「容姿」「(大方の)異性からの需要」
で決まるものでは決してないから。

結構、解決策があったりするから。
策はなくても、目の前が拓けたりするから。
時が経つこと、加齢することで、
かえって救われるものもあるから。


というわけで、
マンガとしては大変に面白い二作品ですけど、
リアルにそのど真ん中にいる女子は、
心臓めっちゃ痛くなって立ち上がれないかもしれないんで
あまりおすすめしません(笑)


そういう人には、山本さほ「岡崎に捧ぐ」。
ホッとします。
よく読めば、なかなかに過酷でブラックな子供たちなんだけど。
大人なら簡単にレッテル貼る闇とか価値観の違いとか嫌悪感とかを
軽々飛び越えていろんな世界を見に行く子供たちが、バカで愛しい。



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