カワイ子ちゃんのいばら道 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



すこし前に
某ホテルロビーにあるカフェテリアみたいなとこでマーとお茶をした


平日の中途半端な時間だったので
私たちの他に客は2組のみ



私たちの隣にいたのは
近くのオフィスに勤めているスーツ姿のビジネスマンと
黒いスーツで緊張しまくりながら履歴書を見せている就職活動中の女子


彼らは至極真面目にOB訪問遂行中



そしてその奥にいたのはカップル


男は年の頃38歳以上46歳未満
ちょっと神経質そうなエンジニア(極私的推定)
オッサンではないけど若くはない感じ



女は年の頃22歳以上24歳以下
とても甘ったるい雰囲気を持ち
顔はとても可愛くスタイルも良い女の子



2人はまだ日も高いというのにべったりと寄り添って
まるで深夜2時くらいの雰囲気をかもし出している


こなれた恋人にも

フレッシュな恋人にもない

濃密だけど平和じゃないそのオーラ



私とマーは喋らずとも目で会話し、同じ結論に達した


「ありゃ、どう見ても不倫だね」



男は時々どこかへ電話をかけに行ったり
携帯をいじったりしているのだが
そこに女がねっとりまとわりつき
男の脚の上に自分の脚を乗せキスをせがみ
男もそれに応えたりして


嗚呼、ねばねばと糸を引いている空気



まだ15時台ですけど…。


(ていうか隣の就活女子と先輩ビジネスマンが可哀相)



やっと彼らが立ち上がり去っていったのだが
男はポチ(広野語でガラガラ引くキャリーケース)を引き
女はでっかい旅行かばんを持っていた


待ち合わせてこれからホテルにチェックインするのか
それともチェックアウトしてバイバイと別れるところなのか



「男は出張だなありゃ…」


「それで女もついてきたっぽいね」


「キャバ嬢かなあ」


「いや…キャバならもちっと立ち振る舞いに馴れてるでしょう、
 あれはシロウトと見たよ」


「だなー」


「あれで別れた後、嫁にすぐ電話して
 “やっと今終わったよ。これから家に帰るよ”とか
 電話してるだろうね」



野次馬根性で盛り上がったが、
マーがたまらないという感じでつぶやいた


「ていうか、何であんな可愛くて若い子がさあ、
 わざわざああいう男と不倫しなくちゃならないの?
 もったいない。いくらでもモテるのにさ」



特に格好よくなくて若くもない男に
とても若くてモテそうなカワイ子ちゃんが
ご執心なのが納得いかないらしい


私は言う。

「逆だよ。ああいう可愛くてモテる子ほど
 おじさんとの不倫にハマるし、つらい恋愛に向かうんだよ」



世の中の常識としては、
「カワイ子ちゃんは苦労せずいい思いばかりできる」だと思うが
それは意外と違うと思う


それができる子は、容姿の良さなんかよりもまず
世渡りもうまく悪知恵も働き損得の計算もきちんとできる
(けなしているのではなく褒めている)上級者のみである



私の見る限りだが


カワイ子ちゃんは「不特定多数にモテる」という点においては
確かにこの上なく、他の女子よりスゴイが


だけど「たったひとりの確かな彼」を得るという点においては
可愛いがゆえにかなり苦労しているなあと思うのだ




「巨乳は意外と得してない論」でかつて述べたが


不特定多数が来るということは、
男として低クオリティな物件も多数混じっているのだ


日々、そういうの含めた有象無象に
きみ可愛いねオレとつきあってよと言わまくることに
いい加減うんざりしているカワイ子ちゃんは


「そうね♪」なんて素直に男の手を取れなくなっているだろう



そして不思議なことにそういう子に限ってなぜか自己評価が異様に低く
自分に自信がない子がものすごく多いもので

さらに若さゆえの知恵の無さもプラスされるわけで


そうすると、勢いだけの若くてバカな男にはない落ち着きと
年相応の知性を兼ね備えたおじさんは

既婚者だとしてもとても魅力的だろう


しかも彼らは一応礼儀として、彼女の容姿だけにギラギラした目を
向けないように配慮する分別を持っているのだ



君は意外にこういうところが魅力的だね、と
容姿以外のことを評価してくれたり、
君は本当はずっと寂しくて悲しかったんだね、と
彼女の自己否定を解いてくれたりする知恵もある




結局はそれも一時の幻惑で


おじさんは一歩離れて見てみれば
奥さんに戦々恐々としているただのおじさんだったりするし
ぶっちゃけ彼女の若さと可愛さに酔いたかっただけで
おのれの家庭を壊す気など毛頭なかったりするのだが


その時は半分信者と化したカワイ子ちゃんはもう離れられない


私たちは本当は結ばれる相手だったのに

いまは運命が邪魔をしている試練の時期だとか

美しい勘違いをしてしまう



おじさんも彼女を連れていれば先々で鼻高々だろうから
腐れ縁はしばらく続いてしまうのであった



ちなみに不倫でなくても
恋人のいる男性とすったもんだして
結局恋人のところに戻られて傷ついて泣く女も
意外に可愛い子が多かったりする




「確かにそうだなあー」
己の知る女友達をザッと思い浮かべ、マーは納得



「だからもはや“可愛いのになぜ?”ではなく
 “可愛いからこそ苦労の道を行く”というのが常識だよ」


私はそんなふうにやっかみを理論化(?)して溜飲下げたりして



下司でヤな夫婦だね!  ←高田文夫ふうに言って下さい




世のカワイ子ちゃんよ
君らは男子の光であり世界の財産だ

もっともっと その可愛さを活かして
しあわせを掴みまくってくれよ!


容姿ですでに大きくで差をつけているのだから
後は個性を好きに磨けばいいではないか 
そしたら他の悩める女子たちよりずっと早く自信がつく


簡単だね