1969年に生まれた私が1969年の彼らを読む。 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



ツイッタ上でmomoさん にオススメされ、旅行の前後でむさぼるよに読んだマンガ。



広野ゆうなのフーテンひぐらし-レッド


「レッド」山本直樹



1969年から1972年の日本を舞台に、革命を起こす事を目指した若者達の青春群像劇。

連合赤軍およびその母体となった2つの新左翼団体をモデルにしている。
講談社の漫画雑誌『イブニング』にて隔号連載中。 (ウィキより)


現在4巻まで出ていますが、まだまだ物語は半ばといったところ。



昔からそのリアルなエロと、虚無的でクールな物語展開が
ずっと気になっていて「必ず読まずにはおれないけどなんか苦手」と感じる作家、山本直樹。


そして一時期よど号ハイジャック事件関連のドキュメント本を読みあさり、
オウムや新興宗教に走ったエリートたちの姿と重ねて、
「なぜ彼らは革命に走ったか、そしてなぜ暴走に至ったか」
個人的にいまも興味が尽きない連合赤軍とその周辺のはなし。


この2つが組み合わさるなら、読まずにおれまいか!




1969年の東大安田紛争後。
さまざまな大学生たちが登場し、彼らが共産主義を至上とする革命を
日本に起こすため、合法非合法さまざまな活動をしていく。
そのさまを、ただひたすら、びっくりするほど淡々と描いている。
物語のヤマとか、オチとか、そういうのをつけないよう、つけないように
ただひたすら淡々と。山本直樹でこれは珍しい。いや、山本直樹だからできるのか。


だもんで、たくさんの登場人物たちがほとんど公平に描かれており
最初の1巻はとにかく混乱。人物と事実がまったく頭に入らない(笑)



これは実際はフィクションではなく、
連合赤軍メンバーたちの手記などを丹念に取材して
名前を変えて描いているノンフィクションと言っていいかも。


ウィキをみると、登場人物の誰が実在の誰に該当するか書いてある。



「世の中をマシにしようと思っている内に真逆のことをやってしまう。
それは歴史的に何回も起きてることだと思うんですよ。中国の文化大革命とか
カンボジアのポル=ポトとか。何回も起きたし、起き続けているしこれからも
あるし、そういう人間の心理はなんかすごいな、って。


理屈みたいなのが地面から足が離れると人間はそういう『狂気』の方向へ
行っちゃうのかなって。(『レッド』では)これから人の生き死にや
グロテスクな暴力が出てくる予定なんです。今までエロをやっていた時に
出てきた(人の心に潜む)化け物みたいなのが出てくるかもなっていう段階ですね」



ネットで見つけたどなたかの寸評からの拝借で恐縮だが、
山本直樹は「レッド」についてこうインタビューに答えている。



私がオウム、カルト宗教、ポル・ポト、そして赤軍の
ドキュメント本を読みまくるのもまさにそういう心理の動きが
知りたいからである。



だって彼らは最初、善良で優秀な一般市民であり、
のほほんと生きてる我々よりずっと真剣にマジメに
「この国をもっとよくしよう」「もっと素晴らしい自分になろう」
と思い、そのために何かしなくてはと立ち上がった人たちなのだからさ。



「レッド」には、その過程がひたすら描かれているだけなので、私のいちばん知りたかった
「この時代の若者はなぜここまでイデオロギー!イデオロギー!だったのか」
「なぜ大学生たちに共産主義が人気(?)だったのか」
は分からずじまいだけど



世の中をよくすることを真剣に考えて
精力的に活動している若者がすこしずつすこしずつ
活動の軌道と精神のベクトルを狂わせていくさまは
目が離せなくてドキドキひやひやします。



今冬最新刊発売、とのことなので、これも楽しみ。





レッド(1) (イブニングKCDX)
山本 直樹
講談社