ナガザイル物語【第7話】 | フーテンひぐらし

フーテンひぐらし

永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。


■10月30日(火)


ダンススタジオ練習。

初のボーカル2人との合わせ。



Iくんは我が社ではたらいてるけれど、
今回Iくんが連れてくるボーカリスト・
イッコウさんは初の外部ゲストである。



川畑似でブラザーの中に入ってても違和感の全くない
Ⅰくんの連れてくるひとだから、我々は絶対、
「悪そな奴は大体友達」系コワモテ系の、
ATSUSHIぽい人がくると予想していたわけである。





そしたらびっくり。


笑顔が素敵でお洒落さんな、


爽やかなスーパーイケメンで、


大変腰が低くて丁寧で、


でも背はすらりと高くて、


ついでにお坊ちゃまな、



そんなひとが登場したのであるアップ



そう。
女子ウケがかなりキョーレツにいい男性である。
あたしもパフォーマーズも目をぱちくり。




そしてボーカルとの合わせ。


当たり前だが、今まで眼前にいなかった
ツインボーカルが、ダンサーの前に立ちはだかる。



2人ともお金を頂いて歌を披露している方々なので、
「○○くんてー、カラオケ上手いねー♪」
なんていうレベルの上手さでは当然ない。




「そこ、前列はボーカルより前に出ないでねー」


と私が言うたび、パフォーマーたちの目が険しくなってゆく(笑)





休憩時間に話をすると、
イッコウさんはゴルフゴルフを始めて1年半だと言う。



「おっ、じゃあ今度一緒に回ろうよ♪」


ゴルフ歴でははるかに先輩の宮城がうれしそうに言う。
やっと負かせそうなポイントを見つけたらしい。



「あ、ぜひお願いします!今ゴルフにハマッてるんです」


「やろうやろう。で、イッコウくんスコアいくつ?」




イッコウさんが口に出したスコアは、
宮城のベストよりはるかに少ない数値だった。




宮城固まった後、
いじめっ子のように


「やだ!絶対一緒に回らねえ!」




練習後、決起会として飲み会を開いた。
イッコウさんはまだお仕事があるということで
帰ってしまったので、Iくんとパフォーマーでボエムへ。





パフォーマーたち、そこで一気に荒れた。



(特に宮城とハラダ)




「おいおいイッコウさんに全部持ってかれるじゃねーかよ!!」


「観客がボーカルしか見ねー!」


「女がみんなイッコウさんにいっちゃうじゃんか!」


「あんなイケメンで歌上手くてイイ人とかってずりぃよー!」


「ボーカルはずと後ろでいいんじゃねーか!?」


「何で俺らボーカルより前出ちゃダメなんだよっっ広野っ」


「つうか、I、てめー何であんなイケメン連れてくるんだよ!」





イッコウさんは美形で色が浅黒く、例えて言うなら



一見、坂口憲二系だけど、

そこから濃さを抜いているので、


「坂口憲二はクドくてイヤ」という女子でさえイケる


(byハラダ)




のである。
彼らの驚異ももっともである。



あれがIくん系のストリートな匂いのする男ならば、
自分たちとは完全別世界という感じで、
たとえイケメンでもそこまで気にしなかっただろう。


しかしイッコウさんはビジネススーツに身を包んでも、
ばしっと決まる「一般ウケ甚だよろしい」イケメンだったもんだから。




「あのねあのね、大丈夫だから。
 彼らが前にいてもみんなちゃあんとお客から見える位置だし、
 あたし、前で見てたけどもみんなの踊りは全く埋もれてなくて、

 ちゃんと目がいったよ!安心しなよ」




必死に言うと(フォローではなくマジでそう思ったので…)




「バーカ!お前なんて俺らをずっと見てきてるんだから、
 身内びいきになってるだけなんだよー!」




と口角泡を飛ばしながら一斉にスネる。



その必死さは、ネタとは思えない。





なんていうか、
正直可愛い。




向こうのほうがルックスがいいんじゃないか。

自分よりあの人がちやほやされそうでイヤ。
そんなのイヤ!!

こっち見て!



そういうヤキモチは女子の専売特許だと思ってたし、
彼らもいいオトナでプライドもあるだろうから(笑)
気にはなっても気にしてない振りするかと思ったら、
ここまでムキムキーッとなるとはなあ(笑)ふふふ。




その後必死に「君たちはじゅうぶん格好いいし、
ほんとうに自信を持っていいんだよ」
と言葉を重ねても、
ぷうぷう頬を膨らませるばっかりである。



なのでしまいにゃ


「だったらもっと頑張って踊りで目立てばいいだろーが!」


とかあたしがダメ押しの半ギレ(笑)



やー、男て、可愛いことよ。




さあ、泣いても笑っても、土曜日が最後の練習でございます。